競売開始決定通知書が届いた方が自宅を守れた事例

下記は競売開始決定通知書が届いた借地権者が救済された事例です。

加藤さん(仮称)は独立5年目の自営業者で、やっと事業が安定してきた時期でありました。家族は妻と子供一人で、アパートの賃料と事務所の賃料等を考えると年間約240万円の出費がかかりました。
加藤さんには借地上に老朽家屋で独居する義母がいました。その借地上に3階建ての住宅が建てられれば、1階に事務所と2、3階で2世帯住宅というプランをえがくことができ、加藤さんの希望が満たされることになります。

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さっそく地主と交渉したところ、借地権は母親名義のままにするのであれば建て替え可能との回答をえました。金融機関にて融資実行(妻が連帯保証人)の承諾を得て、ハウスメーカーにて約3,500万円をかけて再建築をしました。
最初の5年間は金利が低く月額15万円の返済で良かったのですが、6年目から20万円以上の負担となり、地代を含めると約25万円の支出となっていました。

今後の事を考え、融資先の金融機関に他へのローンの借り換えを相談したところ、快く引き受けてくれることとなりました。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)から地元のA信用金庫へ借り換えが成功し、その後2年ほどはローンも地代も遅滞なく支払うことができました。

その後、事業は順調に推移していたのですが、取引先(顧客)が未収金を残したまま破綻し、一気に資金繰りが悪化して地代と共に住宅ローンの返済もしばしば遅滞することとなりました。
A信金は、加藤さんの会社も長いことはないだろうと考えたに違いありません。金銭貸借にかかる取引約定における”期限の利益喪失”ということを主張して、建物が差し押さえられ、競売に付する旨の通知書が届きました。
加藤さんは、こうなれば開き直るしかないなと思ったようです。地主は地主でここぞとばかりに地代の値上げと滞納による契約の解除通知書を送ってきました。どうもその後はA信金が地代の代払いをしたようですが、債権保全のために、地主の言いなりの地代を供託していました。

競売物件の公示とともに見知らぬ人が毎日建物の周りを見て回り、建物内の様子を窺っています。加藤さんは開き直っていたつもりですが、耐えられなかったようです。そこで、以前地主の代理として会ったことがある当社に、どうしたらよいのかの相談に来ました。

加藤さんも色々な本を読まれていて、競売が実施されるとどうなるのか?残った債権については等、理論ではうまくいくのですが、実際には? ・・・ 最終的に債務を圧縮して、子供の学校のこともあり当該地に住み続けたいとの事でした。

加藤さんと話し合い、以下の要望を把握しました。
要望1 競売になって第三者が入札すると建物を明け渡さなければならないので、競売を中止させたい。
要望2 以降も建物(借地権付)が競売とならないよう、親戚等の知り合いに任意で売却してもらいたい。
要望3 この際、当該債務を圧縮して一括清算したい。

加藤さんの要望を実行に移すために、当社は行動を開始しました。
既に入札期間となっていましたが、加藤さんと一緒にA信金担当者を訪ね、競売の売却基準価格の10%増加にて当社で購入したい旨を伝えました。親戚等の知り合いへの売却は、時間の制約上、難しいと判断したためでした。
また、売買代金の決済が改札期日までに間に合わないことから、手付契約金を後日持参して、競売の「延期申請」をしてもらうことにしました。A信金は債権保全のため地代を代払いにて供託をしていますが、このような状況下で高額な入札者がいないことは金融機関もわかっていることから、任意売却の承諾を取り付けることができました。

今度は地主との交渉です。任売となれば尚更に自分が購入したい意向があったようですが、事情を理解していただき、当社が借地権売買価格の15%の承諾料を支払うことで、今後第三者へ転売する場合は無償にて承諾してもらうことと、地代は従来のまま据え置くことに了解を戴きました。
(注)借地権付建物で一番厄介なことは、地主に先買権(借地借家法19条3項の「介入権」行使の申立)があることです。値段に関係なくどうしても地主が買い戻したい場合はこの権利を行使することになります。)

一旦、当社が借地権付建物を前記金額(競売の売却基準価格の10%増加額)で購入し、現借地人との関係に於いては、そのまま建物賃貸借契約を締結して、加藤さんから賃料を支払ってもらうようになりました。
すぐに義母名義か自分の親名義で買い戻してもよいのですが、債権者に将来の回収を見込みを読まれたくない加藤さんは現状のまま様子をみることとしました。
(注)加藤さんは同居の義理の母親と自分の両親からの借り入れで購入したいとの話もありましたが、これでは、金融機関の任売承諾価格がアップする等、保証人として債務が継承される可能性があったことからこれは内密にしてもらいました。)

程無くB債権回収株式会社(サービサー)からA信金の債権を買い取ったとの通知があり、加藤さんは担当者と面談することとなりました。
現在も収入がそれ程ないことは役所の納税証明で明白です。妻はパートでの収入はありますが、これも非課税の範囲でやりくりしています。親族の資産(特に同居の義母)について聞かれましたが、わからないが基礎年金しかないだろうと答える。月額の返済であれば5万円ぐらい払えるか?一括であれば200万円ぐらい親戚から借りてでも払えないか?と云われました。

これらのことは当社での打ち合わせにおいて確認済みであり、加藤さんは収入が不安定なことや賃料他の支出が多いことにより、定額返済であれば月額1万円以上は払えない。一括でも親戚から集められるのは100万円が限度である旨伝え、後日のサービサーからの回答を待ちました。

1週間後、Bサービサーから連絡があり一括で120万円支払って戴ければこれで免責としますが、如何でしょうかとの回答がありましたので、加藤さんは渋々(内心はこれで晴れて0から出発や~)承諾しました。
サービサーからの債務が無くなった後に、義母と自分の両親から借り入れをして約1,600万円で当社より自宅を買い戻し完了いたしました。

競売時点の残債務が約2,800万円ですから1,000万円以上得した気分であると加藤さんは喜ばれていますが、たいへんなのはこれからです。身内への返済といえども、決められた期日に決められた額を支払うのは当然のことです。関係者の理解と支援に支えられた加藤さんが今後、本業の立て直し、いつの日か身内からの借金を完済することを願ってやみません。

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加藤さんのように自宅を守れる可能性は100%ではありませんが、あきらめずに専門家に事態の打開を依頼することが賢明です。
競売決定通知書が届いてため息をついている皆様には、一刻も早く、メール、またはファックス、もしくはお電話にてご連絡されることをお勧めいたします。

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