借地権者を信用しない寺に対して、借地権の有償譲渡に成功

【時期】
令和7年2月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内某区
【内容】
 都心部で人気が沸騰している住宅地の一角で、戦後まもなくI様のお父様は印刷業を営み、自宅と賃貸併用の共同住宅を建てて暮らしていました。塀を挟んで広大な墓地が拡がっている寺の借地48坪の上に、3階建の堅固な建物(延床面積115坪)が建っていました。

 何回か更新を経過し、I様の両親はその都度、寺が求める更新料を支払ってきました。やがてI様のお父様、お母様が亡くなり、I様も他に住居を構え、当該地は共同住宅の住人のみが居住していました。月額地代は坪760円程度(23区内の地代の平均坪単価は千円超)と安く、地代を支払っても不動産収入は黒字でした。

 しかし、建物は昭和38年築と60年を超え、老朽化が進行していました。令和6年12月末日に更新時期を迎え、多額の更新料を支払う必要があるため、I様は数年前から地主(寺)に対して、借地権の買戻しを交渉してきました。令和元年にI様は当相談室を訪れ、地主との交渉におけるアドバイスを求めました。その後、I様から連絡がなかったため、交渉は順調に推移しているものと推測していました。

 昨年5月にI様から突然メールが届きました。「地主と交渉をしているが、建物の解体に関して地主が推奨する解体会社に依頼するか否か迷っている」との内容でした。さっそくI様と面談をし、解体の見積書、借地権買戻しの契約書を開示していただきました。ぱっと見たところ、前者は相場よりも高く、後者はあまりにもシンプルな内容で手落ち有りと判断しました。I様に確認したところ、不動産会社の関与はなく、寺の土地を測量している土地家屋調査士が解体会社を手配し、売買契約書類も作成しているとのことでした。

 面談から1週間後に、当方の知り合いの解体会社の担当者が現地訪問をし、解体の見積書を作成したところ地主手配の会社の見積書と約200万程度の金額差がありました。地主手配の会社はアスベスト検査費を55万円と見積もっていましたが、当方の知り合いの会社は9万円と相違がありました。他の項目でも不審な点が見受けられ、I様は地主手配の会社に対して懐疑的な心境に陥りました。

 また、共同住宅には借家人が何世帯か残っており、9月末までに退去する予定でした。退去の交渉は地元の管理会社に委託しており、借家人からは期限までに退去する約束を得ていました。I様は売買契約書の内容の修正に関して、直接、寺の担当者に直訴しましたが、世間知らずの住職は聞き耳を持たずで、話し合いは平行線をたどりました。

 7月に入るとI様に寺の代理人を名乗る弁護士から突然、内容証明郵便が届きました。驚いたI様は、これ以上は自身が交渉をすることは困難と判断し、当方に弁護士の紹介を求めてきました。

 I様の住所地からのアクセスの良さと、内容を判断し、N弁護士を紹介しました。N弁護士は以前、他案件で相手側(借地権者側)の弁護士として接触したことがありますが、その対応の手際よさと誠実さが印象に残っており、いつか案件を依頼しようと考えていました。

 I様と一緒にN弁護士を訪問し、事情を説明したところ、お引き受けいただくことになりました。これによって、I様は当方が紹介した解体会社に依頼し、更地化を進める決意を固めました。

 予定通り8月末ですべての入居者は退去しましたが、弁護士同志の契約書のやり取りが1か月以上継続し、10月中旬に契約書を締結する運びとなりました。賃貸契約書の期間は昨年12月末でしたが、建物を解体して更地し、建物滅失登記を終了する期限は本年2月末という内容となりました。

 I様様の建物は隣接の建物と10CM程度しか離隔していない箇所があり、解体はかなりの困難が予想されました。11月上旬から解体工事を進めると、案の定、隣接建物の高齢の居住者から毎日のように音のクレームがまいこみ、その都度、解体会社の担当者が誠実に対応をしました。当方も担当者及びI様と隣接居住者を訪問し、事情を説明しました。昨年の暮れに訪問をしましたが、本年に入るとクレームは止みました。そして1月下旬に解体は終了し、当方が建物の滅失登記申請をサポートし、2月中旬に滅失登記が完了しました。

 弁護士が介在したことによる費用が発生し、当初の手残り金額よりも低くなりましたが、金に換えられない安心を得られることができ、結果的にはとても良かったとI様からお褒めの言葉を頂戴しました。またI様は本件に関してネットで知りえた会社を複数訪問して相談したとのことで、最終的に当相談室を信用していただき、円満に解決できました。

 当方はN弁護士の力量を再確認することができて新たな提携先を確保でき、さらに依頼者の要望を満たすことができましたので、大変実のある案件となりました。

 

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