使用しなくなった実家の借地権を地主に有償返還

【時期】
令和3年12月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内S区
【内容】
 当方の知人であるN氏は大変親孝行な男性で、要介護状態になった80代後半の母親の介護をするために、自宅から電車で1時間程度にある実家に寝泊まりしていました。その生活が5年程度継続したある日、N氏が仕事に出ていた日中に母親が玄関先で転んでしまい、骨折して歩行困難な状態に陥りました。
 自力での介護を断念したN氏は母親を近隣の介護施設に入居させ、実家は空家状態となりました。所有権であれば、維持コストは固都税程度ですみますが、借地権のため、地代がかかりました。空き家になってから1年程度が経過し、当方が相談を受けました。N氏は火事の発生を懸念し、実家を処分したいと思い至りました。
 借地権の内容を調査すると、土地賃貸借契約書は40年以上前のものが残っているだけで更新手続きをせずにいること、建物の相続登記が行われていないこと等が判明しました。N氏は当該建物の南側に存在していた借地権付き建物を10年以上前に地主に買い戻してもらっていました。もともとは、道路に面している南側建物で商売を営んでおり、残った北側建物に居住していたのです。北側建物は西側私道からの敷地延長状態で、南側敷地は駐車場になっています。当該借地権の地主は4名存在しており、N氏に確認したところ、うち1名しか面談したことがないとのことでした。
 また、N氏の建物はもともとN氏の父とその弟の2名の共有でしたが、両名とも亡くなり、父の弟は相続登記を済ませたもののN氏の父の相続登記は未了でした。地代はN氏の母親が支払っており、見かけ上はN氏の母親が単独の借地権者のように思われますが、土地賃貸借契約書が存在せず、建物謄本の所有者がN氏の従兄妹2名と父になっていますので、権利者(借地権者)を確定する必要があります。N氏の父が亡くなった際の相続人はN氏の母親、姉、兄、N氏の4名ですが、兄が2年前に亡くなりましたので、兄に代わって兄の嫁が相続人になります。N氏が各相続人を説得して、父の相続分を母に相続登記することができました。
 それと並行してN氏が地主に連絡をし、借地権の処分を当方に依頼したことを報告しました。すると、地主から地元で60年以上営業を続けているK不動産会社と交渉をして欲しい旨の連絡がありました。ここからが当方の出番です。N氏から10年以上前に実施した南側借地権の処分条件をヒアリングしていましたので、折り合いが付きそうな条件でK不動産会社と交渉に臨みました。価格も重要な条件ではありますが、建物を解体する際に南側駐車場の一部を使用させていただくことが、ポイントとなります。使用できない場合には手壊しになりますので、解体費が200万円程度上昇してしまうことになります。地主への提案書にはそれも書き加えました。第一回目の交渉後、1週間程度でK不動産会社から連絡がありました。当方の提示額から減額とはなりましたが、南側駐車場の使用を許可していただきました。N氏にその条件を伝えたところ、他の共有者からも同意をいただき、話は一気に進展しました。
 相続登記の終了を待って、合意書(土地賃貸借契約の解除)を締結しました。建物は借地権者の費用と責任で解体し、滅失登記完了後に立退料を支払っていただく内容です。N氏の建物には親の代からの2世帯分の残置物が存在していました。N氏の従兄妹及びN氏は2か月近く残置物の整理に没頭し、いよいよ解体する前日は全従兄妹が集まり、家の思い出話に花を咲かせました。
 その翌日から解体が開始され、解体は順調に進行しました。1か月以上経過し、土間の下を掘るとガラが出てきました。建て替える前の家を解体した際の残滓を埋めてしまったようです。さらに敷地延長部分のアスファルトを掘ると下水道管が出てきました。見ると隣地と共用状態になっていました。この下水道管を撤去すると隣地の下水道が当該地にダダ洩れ状態になるため、撤去ができません。また雨水桝も隣地と共用になっていました。そこでK不動産会社の担当者に状況を確認してもらい、現況のままの処理を容認してもらいました。ただし、条件が付けられました。隣地借地権者から、越境物に関する覚書を取ることを要望されました。N氏によると隣接借地権者とは大変仲がよく50年以上前には近所の公園で遊んだ記憶があるとのこと。N氏から隣接借地権者に連絡をしていただき、下水道管の共用が発覚した3日後に隣接権者から越境の覚書に署名捺印をいただくことができました。その翌日に地主が現地を視察し、当方が説明をして承諾をいただくことができました。建物滅失登記申請書を当方が作成し、N氏とともに法務局を訪問し、申請書提出後1週間以内に滅失登記が完了し、無事に地主から立退料が入金されました。
 N氏の依頼から4か月以内のスピード決着となり、年内で整理できたことにN氏も当方も安堵いたしました。K不動産会社の担当者からも、「借地権の処理は経験した会社でないとできない」と語っていただき、当方の専門性を認めていただきました。

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