競売物件を購入する際の注意点

競売物件として流通する借地権付建物の種類

競売物件(国や自治体が申立人となって競争入札を行って差し押さえ物件を売却することを公売と言います。当サイトで競売という場合には、公売も含めています)として世に出てくる借地権付建物には以下の種類があります。

 (1) 専用住宅:自己居住用
 (2) 併用住宅:自己居住用兼自己事業または収益住宅等の併用住宅
 (3) 共同住宅:第三者への建物賃貸を目的とした収益物件
 (4) 商業ビル:高度利用可能な地域における事業所・店舗等のビル
 (5) 区分所有:借地権付分譲マンション等

以下、それぞれの種類の特徴と取得時の注意点をご説明いたします。

(1)&(2) 専用住宅・併用住宅

建物が古い場合は、事業資金等の融資担保として差し入れられ、事業が失敗して担保権が実行されたものが多く見受けられます。建物が新しい場合は、建て替えの住宅ローンの金利負担に耐えられず、返済が困難となったものが多く見受けられます。
特に建物が古い場合は、名義変更だけでなく建替承諾が必要になるだけでなく、住宅ローン等の融資を受けて購入する場合には金融機関が求める承諾書(当サイトのダウンロードサービスにおいてサンプルの取得が可能)が必要となります。

(3) 共同住宅

現状のまま使用可能な物件は、非常に収益性が高く、地代を差し引いても15%~20%といった物件もでてきています。最近はこの種の物件への入札者も多く、落札価格は値上がりしており、利回りが下がり気味となっています。
借地人が安い地代で高い収益を上げていることを快く思っていない地主は、入札に参加するケースもあり、自分が落札できなければ、承諾時に多額の名義変更承諾料や、賃料値上げを求めることもあります。
また、借地人が同族法人へ一括転貸したり、長期に及ぶ賃料滞納が存在する場合がありますので、地主が契約解除の通知をしていなくても注意を要します。さらに、古い建物の場合は、入居者が無くなり修繕や建て替え問題が発生し、思わぬ負担となることがあります。入札する際には比較的新しい建物を選択することがベターです。古い建物の場合は、建替え経費をも見込んだ収支を構築する必要があります。

(4) 商業ビル

相続対策または最有効活用として、自宅を最上階にしたり、自己店舗・事務所を兼ねているケース等様々です。現在の賃料収益では借入金の返済が困難となり、やがて金融機関等が担保権を実行して競売物件として世に出てくるのです。
ビル化した物件は地代が非常に高く、取得経費も非常に大きいので注意を要します。
建物の建築時期や構造、付近の賃料相場との比較や空室状態を調査し、地主の承諾料を含め採算に合うかどうかを十分に検討する必要があります。
地代等を差し引いても現状で十分収益が上がれば高収益物件として取得できます。現状では使用困難ですがコンバージョンによって再生できるような物件であれば、経費をかけてリフォームして入居者を確保して高利回りを志向する方法もあります。

(5) 区分所有

このタイプは古いマンションが多いですが、地主の承諾等の必要が無い場合もあるので、通常のマンションの競売と同じようにマンション管理組合や規約等を確認する必要があります。
個別に地主の承諾が必要な場合や、隠れた地代の滞納(管理費に含む場合もあり)もありえますので、注意を要します。

地主から借地権の名義変更の承諾を速やかにとれるか?

借地権付建物において建物は物権であっても、借地権は地上権設定(物権)されているケースはまれであり、殆どが土地の賃借権(債権)であることから、借地権の取得においては、土地所有者(地主)の許可が必要となります。

地主はこれを絶好の機会と考え、賃料(地代)の値上げや多額の名義変更承諾料を要求してくることが考えられます。前述しましたように地主の許可または許可が得られない場合には、借地権者は、競売に伴う賃借権譲受許可の申立(借地非訟の申立)をして、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。この申立は、競売代金の納付の日から2か月以内にしなければならないので、注意を要します。

裁判所による許可では、地主が想定しているような承諾料や賃料の値上げはなされません。ただし、一定期間内に申し立てをしなければならず、裁判期間(3~10ヶ月間)と費用(本人が行えば数十万円、弁護士依頼の場合はその何倍)が別途かかることとや、融資を受ける場合に地主の承諾が必要となる問題が残ります。

地主も借地権の整理の機会を窺っていたとしたらどうでしょうか。「このような状態だから、賃料も払えず近い将来の明け渡しを狙おう。どうせ借地権だから今回は誰も入札しなくて、次回以降に価格が見直されるであろうから、それからにしよう」と考えるかもしれません。
また、実際に地主が入札に参加し、落札できない場合もあるかもしれません。しかしよく考えれば以下の点に気づくかもしれません。地主から優先買取の申し立て(いわゆる当該借地権および地上建物を買い取る旨の申し立て)がなされると、裁判所に代わりの許可(借地非訟)をもらおうとしても、この申し立てが優先してしまい、時間と費用を掛けても無駄になることもあります。

借地権を第三者に譲渡する場合及び競売物件の借地権の場合、土地所有者には借地権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利(「介入権」と呼んでいます)が与えられています。

地主が誰かで大きな違いがある(国、寺、一般個人、法人)

借地権付建物の競売物件は地主の種類によって、その後の対応が大きく異なります。
以下に種類別対応と注意点を解説いたします。

(1) 地主が国の場合

国が貸付する土地は国有貸付地ですが、借地借家法改正前からのものは、旧法の適用を受けるために扱いは殆ど同じです。このケースでは、旧地主が相続税納付のために底地を国に物納にし、財務局が管理しています。
財務局は基本的に底地を処分していく方向にありますので、借地権付き建物を取得後に土地の払い下げ申請をすれば、3ケ月から6ケ月後には土地(底地)も取得することができます。
物納された財産は、物納の基準を満たしていることから、賃料は水準以上にありますし、境界の問題については、境界確定をして利用区分ごとに分筆がなされていますので、特段問題はありません。しかし、物納条件を無理して満たすためになされた文書補完がある場合は、埋設管や建物の越境等に注意する必要があります。

(2) 地主が宗教法人の場合

特に問題が無ければ借地権の名義変更については、通常の承諾料で任意に承諾が取れると思います。しかし取得後に転売することを目的としたり、再建築を同時になす場合には、その分の承諾料もきっちり支払わなければならない事が多いようです。また、特別の事情が無い限り、底地は売却してもらえませんし、寺が借地権付建物を買い取ることもありませんので、借地権付建物という形態のままで将来、売却することになることを覚悟する必要があります。

(3) 地主が個人の場合

これまで安い地代で、更新料等の一時金を取得できなかった地主は、競売を機会にできるだけ承諾料を取りたいと考えるでしょうし、地代も値上げしてきます。逆に管理が大変だと考える地主は、この機会に底地を売却しても構わないと考えます。また、借地権を整理するため本当は入札に参加したいが、対面上の問題もあるためこれができず、第三者を経由して借地権を買い取るという地主もいます。何れにしろ相手方の考えを十分把握しておく必要があります。

(4) 地主が法人の場合

借地権付き建物の競売において登場する法人には2種類が存在します。元々個人地主の所有であった土地(底地)を相続対策等のために、地主自身を代表とする会社(法人)を設立して財産を移転して出来たものと、第三者による業者法人が地主になる目的として設立したものがあります。
前者は、現在の相続税法上で土地保有目的会社と認定されれば、土地の評価がそのまま株式の評価となるため、対応は個人地主と同じでよいといえます。しかし、後者については、そもそも借地権の整理を目的に取得しているケースが多いことから、通常は任意に整理しているか、競売等に参加しますので、相手方の資力・信用力を十分調査の上、対応をしていく必要があります。

地主の種類別対応法を表にしてみました。ご参考にしていただければ幸いです。

相手方 名義変更承諾料 承諾 底地売却 買取
10%相当額 事務手続 事務手続 なし
10%相当額 可能 困難 通常無し
個人 10%~15% 条件付 可能 条件付
同族法人 10%~15% 条件付 可能 条件付
一般法人 10%~20% 困難 条件付 条件付

上記しました通り、借地権付き建物を競売で取得する際には、様々な落とし穴が存在しています。
したがって借地権付き建物の競売参加を考えた方には、専門家に依頼して処理をしてもらうことをお勧めいたします。
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