かつて公売になった底地を、路線価評価額の半値以下で取得

【時期】
令和3年4月
【分類】
借地権の売買
【場所】
都内S区
【内容】
 4年前のある日、相談室に電話がありました。「更新時期を迎えたが地主から更新料の請求がない、また敷地は道路との接道距離が3Mあるか無いかで、財産価値が保たれるか不安である」という内容でした。たまたま相談者方面に出向く他の要件があり、現地を訪問し対面しました。借地権者は高齢の方が多いのですが、相談者A様は40代と思しき方で母親(借地権者)と同居しているとのことでした。人気の住宅地に存在しており、敷地延長地とはいうものの60坪を超える敷地で、陽当たり良好の借地権でした。
 借地権者は20年前に前所有者から借地権付建物を購入しました。土地の賃貸借契約書も拝見しましたが、市販のものを流用しており、特段、問題になる箇所はありませんでした。しかし、土地の登記簿謄本が問題でした。国税、都税、隣県某市による差押えがなされていました。当方は国税滞納(主に相続税未納)による公売はよく見かけますが、固都税や住民税の滞納はあまり見かけません。
 それにしても地主はなぜ税金の滞納があるのに更新料を請求して来ないのか不思議に思いました。当方から更新料が請求される場合の相場額と、更新後に請求されるかもしれない地代改定に関して説明をし、面談は終わりました。
 その後、半年以上経過してA様から電話がありました。国税局からA様に底地を公売にする旨の連絡があったとのこと。もともと心臓に疾患を抱えるA様のお母様は、その知らせにより、体調が悪化してしまったそうです。ネットで公売情報を確認したところ、確かに公売対象になっていました。当該地は道路(公道)との間に帯状の細長い土地(以下、帯地)も存在しており、その帯地は76Mの長さがあり、複数の土地がそれに面している状態でした。公売の対象は当該地(底地)と帯地の2筆でした。ちょうど九州で、不動産会社が道路(私道)を購入して道路が通行できなくなったという事件がワイドショーに取り上げられた時期であり、底地と帯地の購入者が似たような悪さをする可能性をA様に説明しました。
 A様は決死の覚悟で国税局の担当者にそのことをアピールし、その結果、公売は取り下げとなりました。A様はこれにより安堵いたしましたが平和な日々は長く続きませんでした。それから半年以上経過して、今度は帯地を除いて底地単独で公売がなされることになりました。A様は再び国税局に出向き、アピールをしましたが、前回と担当者が異なり、なかなか理解をしていただけないようでした。当方もできるだけのアドバイスをしたところ、A様の願いが通じ、今度も公売が取り下げとなりました。
 そしてそれから1年以上が経過し、A様から連絡がありました。また公売かと思いましたが、今度は仲介会社から底地購入の打診があったとのことでした。A様と面談をし、仲介会社とのやり取り、地主の状況の把握に努めました。仲介会社は地主からの依頼を受けて活動をいたしますので、借地権者に寄り添った提案をしにくくなります。仲介会社の担当者に不信感をいだいたA様は、当方に仲介に参加することを依頼いたしました。
 当方は手紙を地主に郵送し、面談に至りました。地主は各種税金を滞納している方とはお見受けできない様子でした。地主は、親の相続の際に争いが勃発し、自身は隣県に居住するようになったこと、仲介会社とのいきさつなどの話をされました。その後、A様を交えて面談をしたい旨の希望があり、話し合いを重ねた末に前記の仲介会社が登場しました。地主はレインズに記載されている金額に未払い更新料(相場よりも高い算定額でした)を加算した金額を支払うことを条件にするという暴挙に出てきました。
 A様はレインズ記載金額に数十万円を加算した金額までならば購入したいとの希望があり、それを仲介会社に伝え、3か月が経過しようとしていました。A様から「用意した資金を寝かしておきたくない」としびれを切らして当方に連絡がありましたが、「ここが我慢比べの時期なので、もう少し待ってほしい」旨を伝えました。すると、その2日後に仲介会社から、地主がA様案での売却を承諾したとの連絡が届きました。
 後日わかったことですが、地主は原因不明の病で入退院を繰り返し、早期解決を決断したようです。結果的にA様は路線価評価額の半額以下で、底地を取得することができました。公売に付された時期は正体不明の人間が現地をひっきりなしに訪れるなど、不安の日々を送りましたが、4月の上旬に決済が終わり、そうした不安から解放されました。長きに及んだ闘いに終止符が打たれ、A様一家は平和な日々を取り戻しています。
 当方にもお褒めの言葉をいただき、達成感が沸き上がりました。借地権者の皆様の笑顔を拝見することが当方の原動力となります。
 借地権者の皆様も、地主との関係が良好でない場合でも諦めずに交渉を継続されることをお勧めいたします。

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