90代の地主の協力を得て、借地権を戸建て分譲業者に売却

【時期】
平成30年8月
【分類】
借地権の売買
【場所】
東京都K区
【内容】
 相談者は60代の独身男性です。一昨年から自宅(借地権付き戸建て)の処理を相談されてきました。少年時代から両親とともに暮らした家(築50年超)を手放し、自身の老後のすみかを確保したいという内容でした。地主は90代の男性で、妻に先立たれ、一人暮らしをしています。
 相談者は地代を四半期ごとに地主に持参払いしており、意思の疎通はできていました。近い将来に勤めを辞めて、老後生活に入るために、借地権を買い取ってほしい旨を地主に伝えていました。当方には買取価格の算定および地主への交渉を依頼されました。昨年の夏に依頼者とともに地主を訪問し、改めて借地権の買取りを希望する旨を伝えました。すると、自身は歳なので、今後は地元の不動産会社と交渉していただく可能性があることを告げられました。
 その後、地主から連絡がなかったため、問い合わせをすると、地元の不動産会社(以下S社)に連絡をしてほしいと言われました。当方は借地権付き建物の評価書を持参し、相談者とともにS社を訪問しました。S社の社長、担当者にお会いすると、とても誠実な印象を受けました。借地権を地主に買い取ってほしいことを説明したところ、社長はすぐに地主にかけあってみると約束してくれました。
 すると2週間程度で、S社の担当者から当方に連絡がありました。地主から「借地権を買い取った後に、有効活用が難しいため、買い取りはしないという結論に達した」と告げられたとのことです。これを相談者に伝えると、「今までの買い取りの内諾とは180度異なる内容であり、どうして変わってしまったのか理解できない」と戸惑いを隠しませんでした。
 S社に理由を確認すると、地主の長女が相続前に現金を減少させることを嫌がり、買い取りを拒否したらしいとのことでした。
また地主は底地を相続前には売却しないという方針も出していました。こうなると、借地権付き建物を第三者に売却するより他に方法はありません。最寄駅から2km程度で築50年を超える老朽家屋をそのまま使用する第三者を想定することは極めて困難であり、事実、近隣の借地権付き建物は何年間も売れずに残っていました。
 そこで当方は、1棟でも借地権付き戸建て分譲を行うと思われる会社をリストアップし、購入を打診していきました。ほとんどの会社は価格すら算定せずに、断りの回答を寄せました。価格を算定した会社であっても、名義変更料と建替え承諾料および建物解体費を売主負担で、買い取り価格は500万円未満という、実質的な金額はゼロ円という条件程度をしてくる有様でした。そんな中、本年初に現況渡しでOKという会社が現れました。その会社は当該地の近隣で分譲したところ、早めに売却できた実績があるとのことで、当方が算定した価格に近い価格で購入することに承諾してくれました。急いで相談者に買い手が現れたことを伝えると、今は仕事(工事監督)が多忙で帰宅できない状況とのことで、回答を保留されました。
 ようやく仕事が一息をついた本年5月に上記分譲会社と売買契約を締結しました。しかし、借地の譲渡の場合にはここから難儀なことがあります。地主に建て替え承諾と譲渡承諾(分譲会社が第三者に売却する承諾料を含む)を得ることがそれで、金額もポイントになります。承諾料があまりに多額だと、手残りが少なくなり、売却後の生活設計に支障をきたすことになります。
 S社を通じて承諾料を交渉し、何とか想定内の金額で治めることができました。その後、隣接所有者と現地で境界確認を行うことも必要で、地主にも登場していただかなければなりません。暑い夏の立会のため、時間は午前10時に設定されました。朝が苦手な地主を車で送迎し、立会は無事に終了しました。
 その後、測量会社が作成した境界確認書と越境の覚書は20枚になり、当方が地主に署名捺印をお願いいたしました。実はこの境界確認書は修正がはいり、地主に改めて署名捺印をしていただくことになり、合計で38枚もの署名捺印をしていただきました。90代前半の地主ですが、頭は冴えわたり、足が多少不自由なことを除けば、ばりばりの現役地主だったがゆえに、この枚数にも協力をいただけました。
 8月31日に新所有者である戸建て業者は無事に土地賃貸借契約を締結し、来年前半には新たな借地権者が誕生する予定です。相談者は現在の工事現場に近い場所に賃貸住宅を確保し、老後のすみかはリタイア後に改めて探すことになりました。
 最初の相談からは2年近くの年月が経過しましたが、無事に相談者の要望を実現できて、ほっと一息をつきました。借地権の処理には地主の協力が不可欠です。経験のある専門の不動産会社に処理を依頼することをお勧めいたします。

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