借地権の譲渡、建物の朽廃、建物の再建築・改築等

1.借地権の譲渡

借地権者が借地権を譲渡する場合には、地主の承諾が必要です。それでは地主が承諾をしない場合には絶対に譲渡はできないのでしょうか。借地権の譲渡を認めても特段に地主の不利益にならないような場合には、仮に地主が借地権の譲渡に承諾を与えなくても、譲渡を認めてあげる必要が出てきます。その制度として、借地権者が借地非訟手続という手続によって、裁判所に対し地主の承諾に代わる借地権譲渡許可の裁判を求める申立をすることができます(借地借家法第19条)。

裁判所は、借地権者から申立があると、借地権の残存期間、地代の支払い能力、借地に関する従前の経過、借地権の譲渡又は転貸を必要とする事情、その他一切の事情を考慮して許可の申立を認めるかどうかを判断します。許可されれば、地主の承諾がなくても建物と借地権を自由に譲渡することができます。そして、認める場合にも、当事者間の公平を図るため必要があるときは、地代の変更などの借地条件の変更を命じたり、借地人に地主への一定の財産上の給付(承諾料)を命じます。地主の承諾を得るために支払われる金員が借地権譲渡承諾料と言われ、借地権価格の10程度が普通であると言われています。

2.建物の朽廃

朽廃とは、建物としての社会経済的効用を失う程度に腐食・損壊している状態をいいます。建物の一部分が朽廃していても、建物全体からみれば、まだ建物としての効用を残しているような場合は、朽廃とはいえません。木造建築物においては、柱、桁、小屋組、梁が折損し、屋根瓦がずれ落ち、雨漏りがひどく、土台等が腐食していて、取り壊した材料がほとんど役に立たず、修理をすると新築に近い程度の費用が必要な場合には朽廃したといえる可能性があります。ただし風水害や火災による滅失毀損は、朽廃にはあたりません。

借地権の存続期間が定められている場合も、建物が朽廃すれば期間満了前でも、借地権は消滅することになります。しかし、新借地借家法では、朽廃による借地権の消滅の制度はなくなっています。ただし、旧法適用の借地権については従前通りです。

裁判所としては借地人が居住している以上、建物としての社会的効用を失っているとは認定しにくいようであり、居住している建物の朽廃によって借地を明け渡すという事例はほとんどありません。

3.建物の再建築・改築

一般的に借地契約において、借地上の建物の建替え・増築・改築(修繕)等をする場合には土地所有者の承諾が必要であると契約書に定められています。
しかし、借地権者が建物を建て替えたいのに、土地所有者が反対して承諾が受けられないことがあります。このような場合、借地権者は譲渡の時と同様に借地非訟手続という手続によって、裁判所に対し地主の承諾に代わる譲渡許可の裁判を求める申立をすることができます。

4.借地条件の変更

借地契約には,借地上に建築できる建物の種類(居宅・店舗・共同住宅など)・建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造など)・建物の規模(床面積・階数・高さなど)・建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用など)等を制限している契約が見られます。(よくあるのが、「借地上の建物は木造建物に限る」といったもので、このような制限を借地条件といいます)。

借地権者が、これらの借地条件を変更して,別の条件の建物に新しく建て替えたい場合(たとえば、「木造建物」を「ビル」に建て替えたい場合)には、土地所有者との間で借地条件を変更する合意が必要となりますが、土地所有者が条件変更に反対して合意できない事態が生じます。このような場合は、借地権者は譲渡の時と同様に借地非訟手続によって、裁判所に対し地主の承諾に代わる譲渡許可の裁判を求める申立をすることができます。

ちなみに旧借地法及び借地借家法により、借地非訟事件手続きを利用することができるのは以下の5ケースに限られています。

  1. 借地条件変更申立(条件変更)
  2. 増改築許可申立(増改築)
  3. 賃借権譲渡許可申立(譲渡)
  4. 競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立(公競売)
  5. 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立(介入権)

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